「強くなる東洋食のすすめ」マス大山「我が強壮食事論」

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強くなる東洋食のすすめ
この血色を見よ!

「強くなる東洋食のすすめ」作/大山倍達 画/沖一 マス大山の料理漫画。こんなのあったんですね。といっても、ここに出てくるのは料理のテクニックの話ではなく、もちろん美食の話でもあろうはずがございません。作者は世界最強の空手家であり、極真空手の総帥・大山倍達であります。かの御大がそんな軟弱であるはずなし。 主題はズバリ「何を食ったら強くなれるのか」。かつて発行されていた極真空手の雑誌のタイトルは「パワー空手」。喧嘩の強さは所詮腕っ節。「力強く、壮健な肉体こそが強さを裏付ける」。もしろん、その肉体を裏付けるのは「食」である。では「何を食えばよいのか?」 御大はこうお答えになられます。ズバリ!タイトルそのもの「東洋食を喰え!」 女子供に喧嘩で負ける自信に満ち溢れる店主がこんなことを言っても、女子供になぶり殺しにされるだけですが、さすが牛殺しが言えば響きが違いますな。 「肛門括約筋は全身の筋肉をコントロールする役割を持っている。痔になるな。朝はまず、酢を飲み、クソを出せ。」 「顎を鍛えろ。そのために固いイワシの干物を丸ごと喰え。噛む力がなければ、なにも喰えん」 顎から肛門括約筋まで、強さへと振り向けろ! 武道家の考えることは一般人とは違います。 「内蔵まで食い物は丸ごと喰え!、白い米と書いて粕(カス)と読む。白米なんてもっての外、玄米を喰え。生命は丸ごといただくのだ」 在日朝鮮人であった総裁らしく伝統的な韓国料理も勧めておられ、キムチのような発酵食品、ニンニク、ユッケのような生肉も食うべきだとのこと。とにかく、食い物は手を加えず丸ごとがポイント。 店主は梶原一騎御大によるファンタジーとしての大山倍達しか知らなかったのですが、この作品を読んで師に興味を持ち、ちょろっとウィキペディアで調べてみました。 「朝鮮全羅北道金堤市出身。16歳まで朝鮮半島で過ごし、山梨航空技術学校へ入学。その後、陸軍士官学校を受験するも失敗。木村政彦の天覧試合に感動し拓殖大学へ入学。政治家を志し石原幹事主催の東亜連盟に参加するも、大東亜戦争が勃発。少年兵として徴兵。敗戦後は千葉を中心とし民族運動に参加したという説もある」 ・・・かなりディープな人物であることを初めて知りました。 「私には夢がある! 道場と農園を一体化し心身強壮な若者たちをこの世に送り出すことである。すなわち『武農一如』」 在日朝鮮人であり、武道家であり、民族主義者として日本を愛した大山総裁。栄養士の科学的観点による健康食事法ではなく、武道家としての経験と勘による「我が強壮食事論」。なかなか無い観点の面白い漫画なのですが、消費主義化し軟弱化していく現代日本への、昭和の激動を生き抜き、強い若者の排出に生涯を捧げた教育者・大山倍達の憂いが随所ににじみ出ている作品でもありました。

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